「性とは何か?」


こう人から聞かれたとき、頭に浮かぶのが「男性と女性」の区別ということを思い浮かべると思います。
大抵はヒトや動物が生まれながらに持っている「性別」のことを指します。
何故、性別が分かれているのか?
それは生物にとって子孫繁栄をするためにとってきた進化の形だからなのです。
生物学的な目でみた場合、上記のような意味になりますが、
人間社会的な目で見た場合は「セックス」や「性行為」などの快楽的な意味を持ったものになります。
「性」は見る視点によって、それぞれ異なる解釈が出来てしまいます。


生物学的な立場でみた場合、「性」とはヒトの場合「女性と男性」の区別ということがわかります。
では、「男性」と「女性」の違いとは何でしょうか?

男性→オチンチンがついている。精子を作ることが出来る。
女性→オチンチンがない。卵子を作ることができる。子宮があり「赤ちゃん」をつくることができる。

少し乱暴ですが、おおまかに見て上記のような違いがあります。
しかし、生まれた直後から精液を出したり、赤ちゃんをつくったりすることが出来るわけではありません。
外見的は男性器、女性器の有無で判断します。
遺伝学には、ヒトの染色体は46本(23対)ありそのうち44本は男女共通(常染色体)のもので、
残りの2本は男女の性別を決定づける性染色体になります。

性染色体にはXとYの2種類があり、女性の場合はX染色体が2本、男性はX染色体とY染色体が1本ずつ
というように、男女によって異なっています。
46の染色体は父親から受け継いだものと、母親から受け継いだものがペアとなって23組にわかれてい
ます。
その染色体の違いによって、男性器と女性器の違いが生まれます。


●体細胞・・・ 男:22対の常染色体+XおよびY性染色体 合計46本
         女:22対の常染色体+2本のX性染色体 合計46本
●卵子・・・・ 22本の常染色体+X性染色体
●精子・・・・ 22本の常染色体+XまたはY性染色体


男女の外見的な違いは女性器以外にも体の成長とともに現れてきます。
最初の発育は、脳や脊髄などの神経系とリンパ系が発育します。
2度目の発育は心臓や肺などの各器官が発達します。
特に思春期(子供から大人への移行期)に成長ホルモンの影響を受け急速に発育、発達します。

思春期とは9〜18歳ぐらいまでの第二次性徴が出現し、性機能が完成する時期をいいます。

この時期は、人生の中で2度目の身体的な発達期にあたり、体型に男女の違いがはっきりと現れてきま
す。またこの発育促進期は女子の方が、男子より2年ほど早く始まります。
思春期になると、女子では卵巣、男子では精巣という生殖器が発達し、性ホルモンが盛んに分泌され
ます。性ホルモンによって男女の体つきの違いがはっきりと現れてきます。


第一次性徴とは、生まれてすぐ分かる男女の性器にみられる特徴(男性の精巣やペニス、
女性の卵巣や外性器)
をいいます。
それに対して第二次性徴とは、思春期になってあらわれる、性器以外のからだの各部分にみられ
る男女の特徴
のことをいいます。


からだの発達をうながしたり、いろいろな器官の働きを調節する物質をまとめて、「ホルモン」とい
います。
ホルモンを作る器官(内分泌腺)にはいろいろあり、脳の下垂体や性腺(卵巣・精巣)も内分泌腺です。
思春期になると、下垂体で性腺を刺激するホルモンもつくられるようになり、このため、性腺が発達する
ので、性腺では性ホルモンの分泌が始まります。
卵巣も精巣も、女性ホルモンと男性ホルモンの両方を分泌します。
ただし、女子では女性ホルモンが多く、男子では男性ホルモンが多く分泌されるので、男女で影響の
あらわれ方が違います。


●第二次性徴の起こるしくみ
思春期になると、脳内にある視床下部というところから、性腺刺激ホルモンを出すよう脳下垂体に
命令が出されます
。すると、脳下垂体から性腺刺激ホルモンが分泌され、男性は精巣、女性は
卵巣に作用し、精巣から男性ホルモン、卵巣から女性ホルモンが出されます。
ホルモンは血液によってからだの各部分に運ばれ、男性として、女性としての第二次性徴があらわれる
ようになります。

男子の場合:下垂体→精巣には「卵胞刺激ホルモン」「黄体化ホルモン」
         精巣→体の各部へは「男性ホルモン」(テストステロン)

女子の場合:下垂体→卵巣には「卵胞刺激ホルモン」「女性ホルモン」(エステロゲン)
         「黄体化ホルモン」「黄体ホルモン」
         卵巣→体の各部へは「女性ホルモン」(エステロゲン)

●思春期の男女の体の変化
女子 ・乳房が発達する。
・脇の下や性器の周りに毛が生えてくる。
・皮下脂肪が増えてくる。
・腰幅が広くなる。
・丸みのある体つきになる。
・初経(初めての月経)が起こる。
男子 ・ペニス、睾丸(こうがん)が大きくなる。
・のどぼとけが出て声変わりが始まる。
・鼻の下、あご、脇の下、性器の周りに毛が生えてくる。
・筋肉が発達する。
・肩幅が広くなる。
・たくましい体つきになる。
・精通(初めての射精)が起こる。


思春期には、からだだけでなく心にも変化が起こります。
特定の人が気になるようになったり,好きな人に触れたい、愛されたいという性的欲求が起こります。
特に男性は、精巣で精子がつくられるようになり、それを排出したいという欲求が起こるため、
セックスしたいという欲求は女性より、男性の方が強くなるようです。



外性器
外性器の種類
ペニス 陰のうから突き出ている器官で、尿道が通っています。
ペニスの先の丸みをおびた部分(亀頭)の先が尿道口となっていて、精液と尿がここから排出されます。
大部分がスポンジのような海綿体組織でできていて、性的刺激によって血液が充満し、ペニスが硬くなります(勃起)。
陰のう 股の間に左右2つ下がっている袋のようなもので、中に精巣(こう丸)と精巣上体(副こう丸)を収めています。


内性器の種類
精巣(こう丸) 陰のうの中に収められていて、精子と男性ホルモンを生成しています。
精巣上体(副こう丸) 精巣で作られた精子が一次的に貯えられます。その後さらに成熟し、精管に送り出されます。
精管 2つの精巣上体から1本ずつ出ている管で、精子を前立腺に運びます。膀胱に沿っていて、精のうと合体し、膀胱の下で尿道と合流します。
精のう 寒天状の分泌物を作り出し、この液は前立腺で精子と混じり合い、精液として分泌されます。
前立腺 膀胱の下にあり、尿道と精管のつながる部分を取り巻くようにあります。陰のうと前立腺の分泌物と精子が混じり合い、精液となりま



外性器
からだの外部にある性器で、女性の場合、意識的に見ようとしないと見えません。



外性器の種類
大陰唇 二つのひだからなる脂肪組織。膣口や尿道を保護しています。
小陰唇 大陰唇の内側にあるひだ。敏感な部分で、性的な刺激によって充血、膨張します。
クリトリス(陰核) 豆粒のような形で、男性のペニスに相当します。
最も敏感な部分で、性的刺激により、血流が多くなり、膨張します。
膣口 膣の入り口。赤ちゃんもここから出てきます。
処女膜 膣口のまわりにある薄いひだで、中央に指一本入れられるぐらいの穴があります。


内性器
外から見えない、体内にある性器のことです。


内性器の種類
子宮と膣口をつなぐ器官。長さは成人女性で約8〜10cm。
性交の時にはペニスを入れ、出産時には産道になります。
子宮 膣の上方にある洋梨状の器官で,約8cmの長さです。
ここで受精卵が着床し、胎児が育ちます。
卵管 子宮上部から左右に伸びている直径約1〜3mm、長さ約10cmの管。卵管から排出された卵子は、卵管膨大部で受精し、受精卵は卵管を通り子宮へいきます。
卵巣 うずらの卵より少し大きいぐらいの大きさで、左右に1つずつあります。卵巣には女性ホルモンを生成し分泌することと、卵子を作り排出する2つのはたらきがあります。


月経とは、周期的に膣を通って出血し、数日で止まるという現象ですが、そのしくみは複雑です。

月経のしくみ
女性は生まれたときから、おなかの中にある左右の卵巣に無数の原始卵胞を持っています。
思春期になると、脳内にある視床下部から卵胞刺激ホルモンを出すよう脳下垂体に命令が出され、
脳下垂体から卵胞刺激ホルモンが出されます。
卵胞刺激ホルモンは卵巣に作用し、卵巣の中にある原始細胞は活動を始め、卵子を含んだ成熟卵胞と
なります。
この時、卵胞からは卵胞ホルモン(エストロゲン)が分泌されます。
その後、脳下垂体は、黄体化ホルモンを分泌し、卵巣を刺激します。
これにより、卵胞から卵子が排出されます。これが「排卵」です。

月経の個人差について
初経を迎える年齢、月経周期、月経日数、出血量には個人差があります。

初経
初めての月経のことで、初経を迎える年齢は平均12〜13歳(小学校6年生〜中学校1年生)
ですが、8歳(小学校3年生)で迎える人や、16歳(高校1年生)になってやっと迎える人など様々です。

月経周期
月経初日から次の月経の前日までをいいます。
25〜38日が正常範囲ですが、思春期には多少ずれがあり、毎回周期がちがっていても
心配ありません。

月経日数
正常範囲では3〜7日ですが、思春期には不規則です。2日で終わったり、10日以上続いたりすることも
あります。

出血量
日によってちがうのが普通で、だいたい2日目をピークにだんだん減っていきます。
出血量は人によって全くちがうし、周期によっても多いとき、少ないときがあります。

基礎体温
基礎体温とは、朝目覚め、まだからだを動かしていない状態で測定した体温のことで、女性は排卵と
月経の周期により日によって変化があります。

基礎体温の変化
女性の基礎体温を変化させるのは、卵巣から分泌されるプロゲステロン(黄体ホルモン)です。
月経から排卵が起こるまでの約2週間は低温が続きますが、排卵が起こると卵巣からプロゲステロンが
分泌されるため、その作用で体温が上がり、高温が続きます。
排卵後、妊娠しないとプロゲステロンの分泌はなくなり、約2週間後の月経が始まる頃には
体温が下がります。

基礎体温で分かること
排卵期が分かり、妊娠しやすい時期を知ることができます
低温期から高温期に移る時期が排卵期です。
その時期が最も妊娠しやすい時期で、基礎体温で避妊する場合は、精子の寿命3日と卵子の寿命1日を
考慮して排卵期の3日前から排卵期最終日に1日たした期間のセックスを避けます。

しかし、低温期と高温期がはっきり分かれる人でないと、排卵期は分かりにくく、この方法は避妊法として
有効ではありません。

排卵の有無が分かります
低温期と高温期がはっきり分からなかったり、低温と高温がばらばらだったりする人は、排卵がない状態で
ある可能性があります。
思春期にはよくあることで、基礎体温を測り、記録を続けてしばらくは様子を見てもよいでしょう。

高温期が続く
妊娠するとプロゲステロン(黄体ホルモン)の分泌が止まらないため高温期が続きます。
よって高温期が3週間以上続く時は妊娠の可能性があります。

基礎体温の測り方
1.毎朝同じ時間に測る。
2.朝目覚めたら、ふとんを出ず、体温計(婦人体温計、薬局で売っている)を舌の下に入れて測る。
3.測定が終わったら、基礎体温表に記入し、前の日の測定値と腺でつなぎ、グラフにする。

『おりもの』
おりものとは、子宮内の粘液や膣内の分泌物などが混じった液体で、初経が起こる頃から分泌
され始めます。正常なおりものは、透明か白色で、ショーツについて乾くと黄色っぽくなり、
甘酸っぱいにおいがします。おりものの量は、月経が終わると増加し始め、排卵期には最も多くなります。
その後、月経が近づくにつれ少なくなっていきます。


新しい命を作り出す細胞。大きさは約0.1mm以下で、おたまじゃくしの形をしています。
動く速さは1分間に2〜3mmで、寿命は約3日です。


射精
精子は精巣で作られ、精巣から精巣上体、精巣上体から精管を通って精のうに運ばれ、貯えられます。
ペニスが勃起し、性的興奮がピークに達すると、精液の通り道となるところ(精管、精のう、前立腺、
ペニスの筋肉など)が収縮と弛緩を繰り返し、これによって精液は尿道を通り、ペニスの先端から勢いよく
放出されます。
これを射精といい、1回に2〜5mlの精液が排出され、その中には約3億もの精子が含まれています。
射精後は、勃起中は閉じていた静脈弁が開き、海綿体内の血液は静脈に流れていき、海綿体への
血液量も少なくなり、ペニスは元に戻ります。

※精液と尿のどちらも尿道口から出ますが、勃起中は膀胱と尿道の筋肉は閉じるので、両方が一緒に
出ることはありません。
精通の時期や、精液の出る量、精子の数などは個人差があり、年齢によってもちがいがあります。

※精通:初めての射精のことで、だいたい中学生から高校生の間に経験します。

射精の種類
夢精 思春期になると、精液が充満し、夜寝ている間に夢の中で、性的興奮を感じ、自然に射精してしまうことがあります。
これを夢精といい、射精の直前に目覚めることもあるし、朝起きて下着が汚れていることで気づく場合もあります。
遺精 からだが起きている状態で、性的興奮やペニスに刺激を受けたときに精液をもらしてしまうことを遺精といいます。
夢精と遺精は無意識のうちに起こる生理的現象です。
マスターベーション 自分の性器を自分でさわって刺激し、射精することです。自慰、オナニーともいいます。
方法は人によって様々ですが、一般的にはペニスを軽く握り、往復運動を繰り返すことが多いようです。
性交 女性の膣内にペニスを挿入し、一定の運動を繰り返すことによって男性の性的興奮がピークに達し、射精することです。
性交にはパートナーが必要で、そのためには相手の同意を得、相手に責任を持つ意志がなければなりません。



「大人になっても性教育に興味がある」というアンケートをとってみたところ、
「興味がある」と答えた男女が90%以上もいることが分かりました。


学校の授業で使用される、ある保健体育の教科書では性教育に関して記載された
ページが全体のわずか6ページしかありません。
学校で学習する性教育は、保健体育を担当する教師の裁量に任されているのが現状です。
教科書に少しプラスアルファの捕捉を付け加え終わってしまう場合や、
スライドやビデオを使う場合など先生によって授業の内容が違います。
学校で教わらなかった部分は、雑誌や友人、メディア等などから自分で探すしかありません。
最近では、インターネットの普及でいろいろと自分で分かるようになりましたが、
コンテンツはバラバラでこれもまたある程度、検索知識がないと効率よく探すことが出来ませんし
断片的にしか情報が収集できません。
またインターネットが普及する以前は、性教育の情報に関してはかなり厳しい状態です。
アンケートの結果は、男女の興味本位的な部分もありますが、上記ような現状も
関係していると思われますまた学校では、扱う範囲が狭く浅いので大人になってから
知ったり、知りたいと思うことが多いようです。

●性知識をどこから得ていますか?
TV・映画
雑誌
親との会話
兄弟(姉妹)との会話
友人との会話
学校の先生から
インターネットの情報

「学校で習う性教育」は第2次性徴期の男女の体の違い、男女性器のしくみ、受精のしくみ、避妊、
などが主な内容です。このころは男女の身体に関する悩みやセックスへの関心が高いにも関わらず、
授業で教わる内容はあまり深くありません。


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